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何年ぶりろう。２枚通して聞いたのは。１０年は聞いてなかったかも。す、すごいアルバム。わがコスモスレコーズで一番売れている作品だけあるわ。感謝。沢知恵、実にのびやかにうたっていて、かっこいい。ヒュー、ヒュー！　３０歳少し手前の私。いま聞いて、うたもピアノも拙いなあと思うところはいっぱいあるけど、うたうことが楽しくて楽しくて仕方ないという感じ。「一期一会」のスリルを満喫してる。ちょうど東京下北沢ラカーニャで季節公演を始めて２年くらいたったころです。ライブ・テイクはラカーニャと、宮城県白石のカフェミルトンのものが中心です。バブルの最後にデビューして、ラジオの仕事を中心にして、大学出て、バンド活動して、韓国でうたって、会社とレーベル立ち上げて、結婚して・・・そんな２０代を経て、ようやくシンガーとしてやっていくんだ、って思ったっけ。

アルバム〈フー・アム・アイ？〉〈ファースト・ライブ・イン・ソウル〉以来のライブ・アルバムとなりました。このアルバムでしか聞けないのは、《やぎさんゆうびん》《ハロー・グッバイ》《盛岡スコーレ高校校歌》です。あとの曲は、それ以前にＣＤ化したもののライブ・バージョンです。全曲解説したいくらいですが、これは！というものだけピックアップしますね。今回は「マイ・ベスト３」はなし。ライブ・ベストだもん。

ある日、《やぎさんゆうびん》の歌詞を眺めていたら、鳥肌が。このうたって、もしかして終わらない？　たくさんのことばが行き来して、何も受けとめ合えないコミュニケーションを痛烈に風刺している？　やぎさんの楽しい手紙のやりとりじゃないのね。こわ～い。そういうわけで、こうなりました。ＣＤ化するにあたり、まど・みちおさんに電話したら、おくさまが出られて、「いま散歩中ですの。どうぞお好きになさってください」と朗らかなお声で。セミの大合唱を聞きながら電話したのを覚えています。９０歳を過ぎて、暑い中散歩を・・・

《小さな恋のうた》は、モンパチの名曲。いまやたくさんの人がカバーしていますが、私が第１号です。エヘン！　当時まだ著作権の登録もされていなくて、許諾を得るべく沖縄にデモと手紙を送りました。以来、モンパチのみんなとはいいおつきあいをしています。もうこの世にうたなど生まれない。そんなふうに思っていたときに出会って、砂漠で見つけた一輪の花のように思いました。バファリンのＣＭになりましたね。

《ザ・ライン》のピアノ弾き語りバージョンは、イントロで長い日本語の語りがあります。韓国でうたうときは、この語りが韓国語になります。

《ハロー・グッバイ》は、ビートルズの名曲。ある日歌詞を改めてかみしめたら、涙が・・・「あなたはさようならと言うけど、私はこんにちは。」

《盛岡スコーレ高校校歌》は、伝統ある女子校から男女共学になり、あたらしい校歌をということで依頼されました。荷が重かったけど、遊びに行ったら帰れなくなっちゃって（笑）。しばらく居ついてしまいました。ものすごくユニークな学校です。玄関入ると大きな厨房があり、煙がモクモク。生徒が交替で給食をつくり、吹き抜けのおしゃれな食堂で学年ごとに食べます。全員時間割がちがいます。担任の先生（チューター）を、生徒が自分で指名します。英語と韓国語にも力を入れているというので、調子にのって３カ国語でつくったら、採用されました。さらには、世にも珍しい校歌ということで、「ナニコレ珍百景」に取り上げられました。

《しあわせのうた》のあとのアドリブは、曲名には書いてありません。ラカーニャなど自主公演では、ノリにノッてしまうと、こうしてアドリブ・ソングが炸裂します。この日は高知、北海道、鹿児島からも来てくれたみたい。いまのように全国あちこちでうたってなかったから、ずいぶん遠くから来てくれて。ときに海外からも。ありがとう！

《故郷》は、大島青松園コンサートのテイクです。職員のお子さんが通う高松市立庵治第二小学校の子どもたちと入所者の東條高さん（当時は名前がちがいました）、東條康江さんとうたいました。うたう前に、康江さんは言いました。「私ら、故郷はあっても帰る家はない。第二の故郷である療養所で、せいいっぱい生を全うしたい。」康江さんは、りっぱに生を全うして、天の故郷へと帰っていきました。

《蜂と神さま》は、金子みすゞの詩に私が曲をつけたもの。アルバム〈ともえ・ミーツ・みすゞ〉とはちがうライブ・バージョンです。スーパー・ギターリストの和田アキラの長～いソロに注目です。フュージョン界では、ギターの神さまと言われている人です。六本木ピットインなどでセッションをする機会に恵まれ、多くを教えられました。